「伯爵とはちやうど一とまはりぐらゐ……?」  と彼女は品物の値打を見定めるやうに、田沢を見あげ見おろした。 「うむ、まあ、そんなとこかな。だが、さう見えんでせう?」 「ほんとに、女もさうですけれども、人間の年の取り方つて不思議なものですわ。ある面では年相当に老けてゐながら、ある面だけその割りでないつていふやうなことがございますのね。逆にまた、こんなに若いくせに、どうしてそんな年寄じみた考へ方をするのかと思ふやうな、さういふひともゐますし、……社長は、どちらかと云へば、平均にお年を召していらつしやるから、ごく自然な落ちついた感じで、なにか安心できますわ。さういふ方、でも、少うございませう、近頃は……。あたくしさう思ひますわ」  くすぐつたいが、しかし、まんざらでもない田沢の笑ひ顔を素子は素気なく受け流して、 「立花伯爵は、あゝいふご身分のせゐですか、あたくしなんかの眼から見ますと、かう申しちやなんですが、どこか片寄つたお年の召しかたをなすつて、一方ではそれは円満な常識家でいらしつたのに、ある点で、ひどく子供らしい、まあ、やんちやみたいなところがおありになりましたわ。その大きな矛盾が、結局、伯爵のあの悲劇的なご最期を生んだのだと思ひますけれども、社長はどうお考へになりますかしら? あたくし、以前はそんなこと気がつきませんでしたけれども、あゝいふことがあつてから、いろいろ思ひ合せてみますと、伯爵は、いくつにおなりになつても、ほんたうの恋愛がおできになる方のやうな気がいたしますわ」不労所得で脱サラを目指す元学生パチプロのブログ